旅の途上で

私の旅の記録です

備後落合駅を起点に楽しむローカル線

前日までの山口への旅行を楽しんだ後、大阪までの帰路は山陽新幹線ではなく、途中の広島駅から芸備線経由とした。芸備線備後落合駅に行き、少しだけ木次線の列車に乗った後、新見→岡山→新大阪に戻るというルートである。

しかし、山口から広島に移動した日は、芸備線の三次駅から先の区間は大雨で不通であった。とはいうものの翌日は走ってくれることを期待して、とにかく三次駅に行って宿泊するにした。もし翌日も不通だった場合は、あきらめて広島駅に戻るか福塩線福山駅に抜けることを考えた。結果的に当日は始発から通常通りの運行となり予定通り進めることができた。

芸備線は、広島駅と岡山県新見市備中神代駅まで中国地方の内陸部を東西に結ぶローカル線である。

その中で、広島県北東部の岡山県島根県に接しているエリアには将来の路線存続が危ぶまれている区間がある。

輸送密度を調べてみたところ、このエリアにある東城~備後落合間は、全国JRの中で最も低い区間であり、2022年の平均通過人員は20人/日という状況の様である。併せて備後落合~備後庄原間も同様に75人/日という少なさだった。これらの区間を含む芸備線備中神代備後庄原間については、存続を含めた再構築協議会が設置され、国がローカル線の存廃議論に関与することになっている。

また、備後落合駅を起点に、島根県との県境を越えた出雲方面(松江市宍道駅)へ北上する木次(きすき)線についても調べてみた。こちらは備後落合~出雲横田区間は輸送密度54人/日という状況である。

この区間での見どころは、出雲坂根までの3段スイッチバックである。出雲坂根~隣駅の三井野原間は、直線距離は約1.5kmであるが、標高差が160mもあるため、ループ線スイッチバックで6.4km走ることになる。スイッチバックには種類があるが、ここと同様の“通過が不可能な形態のスイッチバック”(駅から先に線路が無く方向転換が必要)としては、豊肥本線立野駅と、肥薩線大畑(おこば)駅が知られており、大畑駅の方は出雲坂根駅と同様にループ線もある。

今回訪問の中心になる駅は備後落合駅になる。今は無人駅であるが、かつては交通の要衝として賑わっていたらしい。

芸備線木次線のこれらの区間を走る列車の数は極めて限られているが、それだけに魅力満載の区間である。風光明媚な路線ではないが、全国的に見ても今乗っておく必要がある路線の一つであると思っている。

今回乗車してみて改めて感じたが、時速25キロほどのスピードで走る区間がある。まるで線路(軌道や路盤)の状況を確かめながら走っているかの様である。大雨や災害による線路の流出が、その後復旧しないまま廃止に追い込まれていくケースは全国にいくつも有る。この路線も極めてもろい。廃線か存続かの議論を待たず、ある日突然の災害で二度と乗ることが出来なくなってしまうということも十分考えられる。

この備後落合駅への訪問は4度目か5度目になる。最近では、2022年8月14日に訪問している(このブログでは2022-09-08に記載)。今回は備後落合駅での滞在時間を少し長めに取ることが出来た。また、前回訪問時と違い、平日のために乗車人員も少なく、このローカル線を心から楽しむことが出来た。なんと、備後落合~出雲横田の上り列車は自分一人、折り返しの備後落合までの下り列車も4人しか乗っていなかった。

行程は次の通りである。前日に三次に宿泊しておかないと、本数が少ない路線のためにこの行程は実現しない。

[三次6:54ー8:14備後落合9:20ー10:26出雲横田13:11ー14:25備後落合14:42-16:09新見16:46(やくも22)17:47岡山18:14(さくら562)18:59新大阪]

その時の様子を残しておく。今回は記録を強く意識したので写真が多くなってしまった。

三次駅6:54発の備後落合行きの普通列車に乗る

備後落合駅に到着する

備後落合駅の様子。駅舎内の展示物を見ていると高齢の男性に声をかけれられた。毎日午前中を中心に、この駅舎にて観光で来られた方へ備後落合駅とその周辺の鉄道情報を説明されている元機関士とのこと。駅員ではなく、ボランティアでずっと活動されているとのこと。20分ほどの説明を受けたことで、この駅と周辺の知識を深めることが出来た。最後の写真は、仲間3人で作成したという備後落合駅ジオラマである。駅構内にある倉庫のカギを開けて見せて頂いた。このあと、この次の写真の木次線列車に乗車するが、備後落合駅を離れていくとき、いつまでもホームから手を振って見送って頂いた

木次線の木次行き普通列車出雲横田駅まで乗車し、また折り返して備後落合駅に戻ってくる

出発前の車両内部からの撮影。備後落合駅を離れていく。見送って頂いている写真はここには残していないが、山間の小さな駅から、自分一人しか乗っていない列車を見送って頂いてることをとても嬉しく思った

今回使用した乗車券

油木駅。全国的に少なくなってきている木造の駅名板も掲げられている

三井野原駅

3段スイッチバック

八川駅。この駅にも木造の駅名板

出雲横田で下車

出雲横田駅。折り返しまで時間があるので、少しまちを散策し、昼食をとることにした。この駅舎内のベンチ、昔は多くの駅で見られたが、今や珍しい

ほとんど見られなくなった、実際に建物に取り付けられたままのホーロー(琺瑯)の看板

木造の電柱。もはや見かけることは無くなった。電柱が立っているところが個人の敷地内の様で、それが残存している理由なのかどうかはわからない

駅前のお店で、ビールと出雲そば。旅行先のこのひとときが嬉しい

備後落合に戻る列車。2両編成だったが、この駅で1両切り離された

備後落合駅に戻ってきた

駅構内に残る蒸気機関車時代の転車台

この列車で新見へ行く

備後落合駅が離れていく。隣の道後山駅までのルートも直線距離は3キロ程度だが、大きなループ線を6.8km走る。この区間の見どころの一つである。と言っても景色が良いわけではない。いくつもの小さなトンネルをくぐりながら、車両が大きく曲がりながら走っているということを感じることができる

道後山駅

備後八幡駅

東城駅

野馳駅。木造駅舎の雰囲気が良い

備中神代駅。次の布原駅との間は、鉄橋を渡る蒸気機関車の3重連の撮影ポイントとして有名だった場所がある

布原駅

新見駅

新見から、新型の特急「やくも」で岡山へ

岡山駅ひかりレールスターが停まっていた。この車両も乗るなら今のうちに・・・

岡山18:14発の新大阪行き「さくら」に乗車。これで楽しかった鉄道旅行も終わる

[2024年7月13日(金)~7月16日(火)]