旅の途上で

私の旅の記録です

大分県の九重町とその周辺

<新幹線移動中の微振動のこと>
先週末の金曜夕方、めずらしくフレックスタイムを活用して少し早く会社を出た。福岡に行くのに飛行機ではなく新幹線で行くためである。それも博多まで「のぞみ」に乗ったのではなく、東海道新幹線は「のぞみ」、新大阪からの山陽新幹線は「みずほ」に乗った。新大阪でわざわざ乗り換えたのも理由はあった。期限切れ間近の新幹線回数券を持っており、それを使ってしまう必要があったからだ。新幹線には乗車したままで、追加料金を支払うことでそのまま博多まで行くこともできるが、あえて新大阪で乗り換えた。回数券を超える山陽新幹線区間エクスプレス予約で少し安く購入している。乗車券の割引は無い。
新大阪では乗り換えのための時間を少し作り、新幹線の改札内にできたたこ焼き屋の「道頓堀くくる」でたこ焼きを食べることにした。「くくる」は新大阪駅の新幹線ホーム増設に併せたリニューアル工事に伴い新幹線の改札内にできた。持ち帰りだけではなく店内での飲食もできる。改札の外には既に何年か前に持ち帰り専門の「くくる」もできている。新大阪駅での積極的な店舗展開で客足も好調に見える。出張者が購入するのだろうか。ところで、自分が好きなたこ焼きは「くくる」のようなふにゃふにゃのやわらかいたこ焼きではなく、歯応えある少しかためのたこ焼きが好きである。お気に入りは、新大阪駅近くの阪急南方駅北側にあるたこ焼き屋「十八番」とか、天五商店街にある「うまいや」のたこ焼きである。歯応えがあると言っても、「築地銀だこ」のようなかたさや油っぽい味ではない。
たこ焼きの話ではなく、新幹線の微振動について記しておきたい。JR西日本の「みずほ」は2011年3月12日の九州新幹線全線開業に併せてデビューした。前日の午後に東日本大震災が発生している。静かな全線開業の日を迎えることになった。事前に準備を進めてきた祝賀行事は一部を除いてすべて中止されている。自分はこの開業日初日の一番列車である博多6:45発、鹿児島中央行き「さくら401号」の切符を確保していた。しかし前日夕方以降の飛行機は欠航となっていたため福岡への移動もできず、一番列車の乗車は断念せざるを得なかったという思い出がある。その後、九州内で「みずほ」には何度か乗る機会があったが、短時間のためいつも自由席の5列席の方に乗っていた。今回は初めて指定席である。「みずほ」の指定席は2列×2の配列であり簡易グリーン車のイメージである。
ようやく微振動について触れることができる。新幹線座席の前のテーブルをおろし、特に意識することなく携帯電話や文庫本を置いていた。するとこれまで東海道新幹線の「のぞみ」では感じたことがなかったが、山陽新幹線の「みずほ」では細かな振動が続いていることに気づいた。携帯電話や文庫本が少しずつ震えながら動いていき、テーブルの端で落ちそうになるまで横滑りしていく。山陽新幹線の建設の方が東海道新幹線のそれよりも新しいし、新幹線も同じN700系であることから原因はわからない。たまたま乗り合わせたこの新幹線のみで起こった現象なのか、いずれの新幹線でも同様なのかわからない。次に山陽新幹線に乗った時に、覚えていたらもう一度確かめてみようと思っている。だからどうだと言うものでもないが、何となく気になる出来事だった。


大分県由布市の温泉>
由布市の温泉と言えば由布院(湯布院、最近ではゆふいんと平仮名書きも)温泉だと誰もが思うだろう。確かに由布院温泉は全国的に知名度が高い。ところが同じ市内にある湯平(ゆひら)温泉というのはそれ程知られていない。かつて湯平温泉は、九州では有名な湯治の温泉と知られていたようだが、今では知る人ぞ知る風情ある温泉地ということになるのだろう。私は温泉名こそ知ってはいたが行ったことがなく、どういう温泉地か確かめたかったので今回の訪問先の一つに選んだ。大分自動車道の湯布院インターを降りて一番初めに訪問した。
温泉地に到着すると、共同駐車場は満車状態、路肩にも駐車車両がずっと連なっている。なんでこんなに車が多いのかと思っていながら走っていると、すぐに理由がわかった。温泉街の入り口には「湯の平温泉まつり」(「ゆのひら」になっている)という横断幕が張られ、多くの人々で賑わっている。偶然にも2日間で行われる「湯の平温泉まつり」というお祭りに出くわした。予測もしていない旅先でのできごとは非常に楽しい。はやる気持ちを抑えながら車をとめる場所を探していたが、何とか共同駐車場の空きスペースにとめることができた。小学生の子供相撲大会の会場では人だかりができ、アマチュアコンサートにも多くの見物人がいる。この2日間は様々なイベントが目白押しのようである。ここに来るまでは、鄙びた宿が数軒かたまっているような温泉地を想像していたが、想像とは全く違う大きな温泉地であった。川と平行した狭い石畳の坂道が続き、その両側に宿が点在している。5つの共同浴場があるようで、坂道を上りきったところの橋の近くにある「金の湯」という一番歴史があるらしい共同浴場に入った。ただし平成20年に改装されているとのこと。あんなに人がいるのに浴場は自分ひとりの貸切状態。湯量はそれほどでもないが、うすく茶色に濁ったお湯がかけ流しされていた。通常200円の入浴料が必要なところ、本日は全ての共同浴場が無料。風呂上がりは気持ちいい。お祭りの雰囲気を楽しみながら坂道をのんびり下って駐車場へ戻った。一度泊まってもいい温泉地だなと思いながら湯平温泉を後にした。


大分県九重町(ここのえまち)の湯坪温泉
数年前にこの温泉地のその宿の前を偶然通りかかったときに、日帰り入浴として温泉を利用させてもらったことがある。湯坪温泉には約20件の民宿・旅館があると言われている内の1軒の宿である。以前から一度泊まってみたいと思っていたが、とうとう今回実現することにした。今回の週末旅行の一番の目的である。電話予約するために宿のホームページを見たが、宿泊料金が相場と比べても異常なほどに安い。露天ぶろ付きの部屋が10,600円。これまでの宿泊経験からしてもちょっとありえない金額。まあこの金額なら少しくらい期待外れでも仕方がないなと思っていた。
温泉は外に個室の風呂が5か所あり、24時間自由に入ることができる。半露天風呂といった感じである。夕食は食事処でのテーブル席であるが、量、質とも申し分なかった。急がされているわけではないが、食事は次々と料理が出てきて、空いた器をさげていってくれるので、わりとテキパキと食べる感じである。でもしっかりビールと冷酒とともに楽しんで食事をすることができた。のんびりと食事しているので、従業員の方がなかなか帰れないということもなく、部屋の布団を敷くのはセルフサービスであったり、そういうところに経費を掛けないようにしているのか。よくわからないが・・・。温泉は無色の単純泉。泉温はかなり高く、水で調整して入る必要がある。
翌朝の精算のとき、女将さんにこの安さについて尋ねたところ、「これなら泊まってもいいかなと思ってもらえる宿泊代金にしている」とのこと。この時代にこういう宿があることにただ驚いた次第である。


九州電力丁原(はっちょうばる)地熱発電所の見学>
雨がひどくて景色を見てまわろうという感じではない。湯平温泉のお祭りはこの雨ではさすがに厳しいな。関係者やお祭りを楽しみにしていた人たちにとってはさぞかし残念だろう・・・。特に行くところもないので、八丁原地熱発電所に行くことにした。
この発電所へは京都大学系のある団体の視察旅行先として一度だけ仕事で来たことがある。もう15年位前になるだろうか。うろ覚えであるがこの発電所近くの筋湯温泉に宿泊したと思われる。翌日は九州大学大宰府にある研究所の視察も併せて訪問したことを思い出した。
展示館では、ちょうど観光バスで来ていた小学生の団体と一緒だった。発電所の方からの説明を聞き、現地建屋内のタービンと発電機の見学を行った。ここは出力55,000kW×2基で110,000kWの電気を発電することができる国内最大の地熱発電所である。さらにバイナリー発電(2,000kW)も1基増設されている。3.11の大震災以降、再生可能エネルギーの比率を高めようとするエネルギー政策があるが、風力設備や太陽光設備と違い、燃料費のかからない安定したエネルギーを得ることができる発電設備としては非常に魅力的である。全体の発電量からすれば地熱発電の比率はほんのわずかであるが、国内にはまだ適地があるとされている。国立公園内にあることからの制約や、温泉湧出量や泉質への影響を懸念する温泉地の反対はあるが、国内エネルギー自給の一つの選択としての魅力は捨てきれないと考えている。


九重町について思うこと>
九重町は「ここのえまち」と読むが非常に観光資源に恵まれた町と言える。筑後川の源流の玖珠川を有し、町の約半分を「阿蘇くじゅう国立公園」「日田耶馬英彦山国定公園」が占めている。くじゅうは九重(くじゅう)連山のことである。この辺りでは「ここのえ」と読んだり「くじゅう」と読んだりしてよくわからない。この町には、10ケ所以上もある温泉地、龍門の滝、日本最大の地熱発電所、日本一の人道大吊橋(「九重“夢”大吊橋」という)等々の観光地があり、熊本県境付近ではスキー場まであるらしい。九州でも積雪はあるが、スキー場もあるのかと改めて感じさせられる。さらにこの大分県熊本県の県境付近(熊本県小国町、南小国町など)にもたくさんの温泉地があり、まさにこういうエリアを温泉天国と言うのだろう。自分も大好きなエリアでこれまで何度来たかわからないほどである。
福岡市内からも大分自動車道でそれほど時間もかからない。2時間もあれば来ることができる。こんなに観光資源のある町も珍しい。九州内だけでなく、関西方面やさらには関東方面までも積極的に知名度をあげる活動をしてほしいと思った。


<その他の日帰り入浴をいくつか・・・>
【筌の口(うけのくち)温泉】
共同浴場(200円)。温泉の色は黄土色っぽい。多少鉄分交じりか。適温で快適。湯船は風呂場の真ん中に四角い湯船。縁からお湯が流れ出ている。建物の古さと湯船の雰囲気に風情あり。飲用可能。
川底温泉
「旅館蛍川荘」(500円)は、川にかかる橋を渡って入る河畔の温泉宿。湯船の底から無色透明のお湯が湧出。3つある石の湯船。適温。2度目の入浴。前回は8〜9年位前の激しい大雨の日であるが、日程の記録がすぐに出てこない・・・。
天ケ瀬温泉
これまで2005年12月に「浮羽別館新紫陽」、2006年12月に「旅館本陣」という旅館に宿泊している。今回は「旅館本陣」隣の「旅館天龍荘」にて日帰り入浴した(500円)。建物の上層階に明るい雰囲気の広い露天風呂風の湯船がある。硫黄泉でわずかに湯の花あり。

[2013年5月17日(金)〜19日(日)に訪問]